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執筆者の写真Massako Mizoguti

スプリンジェールとドイツの友人

旧ホームページ(この記事は2010.2にアップ)より転載


17歳の頃から文通している同い年のドイツ人の友人がいます。

Wolfgangは旧東ドイのHalleに住んでいました。

西側の人間とは交流できない兵役期間はお母さん宛に手紙を出したり、

壁が崩壊する前後には、ちょっとした緊張感も味わいました。


20代の頃、無謀にも東ベルリンまで会いに行ったことがありました。

その頃の東ドイツは、一般家庭には電話さえなく、旅行も許可制で、

彼らがハレからベルリンまで出てくることさえ、大変なことだったと想像します。

私も、一般外国人旅行者として東ベルリンへ「1日ビザ」で入ることができるだけでした。

その頃私が長期滞在していたパリから手紙をやり取りし、

待ち合わせは東ベルリンのテレビ塔の前、と約束し、

本当にやっと無事会えた時のこと、そしてその日の思い出はものすごくたくさんあります。


友人は今では会社を経営し、できなかった海外旅行もたくさんして、家も建てたり。

私とは雲泥の差ですが、近年は奥さんBarbelとお菓子のことを話すことも。

1988年のクリスマスプレゼントに、Wolfgangが送ってくれたドイツ菓子の本(下)には

フランスにもあるスプリンジェールが載っているので、ドイツに今もあるのか?など

いろいろ質問攻めにする中で、素敵なスプリンジェールのサイトも教えてもらいました。

当時東ドイツだったライプツィヒで1987年に出版された本は、カラー写真もあり、

東側としてはとても贅沢な内容。


2009年のクリスマスプレゼントに、何がいいかと聞かれた時、

菓子木型か、木型についての本!と答えたら、私の希望通りのものが届きました。

そこで、洋菓子をあまりつくることのない私が、「実験」と称してくってみました。

教えてもらったスプリンジェールのサイトのルセットで。一番上の写真です。

右に見えるのが、エピファニーを題材に彫られた18世紀末木型を復刻した樹脂型。

型と一緒にやってきた木型の本は写真が美しく、とても見ごたえのある本です。

友人たちのお土産の木型やテラコッタ型と、今回届いたエピファニーの型(樹脂製)で実験。


この菓子は、伸ばした生地に型を押し付けて、抜いたりカットしてから、

半日から丸1日、または2日乾燥させることがポイント。

乾かすことで表面の模様もくっきり。乾かなかった底のほうが焼くことで膨らみます。

なので、上の面は模様がきれいに、底が立ち上がるのが特徴の菓子です。

また比較的低温で焼くこともあり、表面は白く仕上がります。

クリスマスツリーの飾りとしても活躍。

木型の本には、美しい彩色をしたものなども見えます。

一番上のだけが、アニス粒入りのスイス土産。

あとは私のつくったもので、底部があまり膨らんでいません。

「足のないスプリンジェールはまがいもの」という言葉があるそうですから、

私の実験の成果はまさにまがいもの。


スプリンジェールspringelreという呼び方はアルザスなまりのフランス語のようで、

ドイツ語だと、シュプリンゲルレ?

アルザス以外のフランスでは、パン・ダニpain d'anisと呼ぶようです。

油脂の入らない、ちょっと古めかしい感じのシンプルなクリスマスのお菓子で

アニスという、スペインや南仏などで親しまれる香辛料がポイントです。

大航海時代にスペインを通じて、フランドルへ入ってきたのでしょうか。


型(柄)とは切り離せないこの菓子には、何か絵馬的な要素もあって、興味深いです。


スイス土産の天使の木型で。

2010.2

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