旧ホームページ(この記事は2005.10にアップ)より転載
今年はちょうどこの行事の直前、広島へ出向いて仕事をしていました。 オープンしたてのカフェやショップの仕事に後ろ髪を引かれながらも、 この機をのがしてはと、早朝広島を発ち、瀬戸内海に面した岡山県牛窓町へ。 「ししこま」が目の前でできあがっていく様子に、前日までの疲れもどこへやら。 「ししこま」は他の土地のしんこ細工より大振りで、色の生地の使い方にも特徴があり、 へらやはさみ細工が多用され、技術的にも手が込んでいました。 海のもの、山のもの様々作りますが、やはり海のものが多いように感じます。 カラフルな色の魚は「ギザミ(またはベラ)」という魚だそうです。
この「ししこま」は八朔のお雛さまにお供えするといいます。 牛窓では八朔(旧暦8月1日)にも雛祭りの習慣があるのです。 調べてみると、古くは平安の頃から、重陽(9/9)や八朔に、「後の雛」と呼んで お雛様を飾る風習があったようですが、そんな名残なのでしょうか? その年に女の子が生まれた家ではたくさんつくり、モロブタに並べておいたとか。 すると近所の子供たちが「ししこま」を借りにきたそうです。 「あげる」のではなく「貸す」。そして借りたら「返す」という、
喜びを繋いで分かち合う行事だそうです。 一度廃絶して、今は保存会の方々が継承していらっしゃいます。
輪の中へ入れてもらい、丁寧に作り方を教えていただけて、最高に楽しんだ私でした。
今回は新しく女の子が生まれたお宅がなかったので、つくられませんでしたが、 初雛には必ずつくるという「臼ネブリ」という「ししこま」独特のモチーフがあります。 私はこれに一番興味を持ちました。機会があったら実物を見たいものです。 「ししこま」の由来ははっきりしないようで、いくつか説があります。 その中でも一番美しい伝説は、三韓からの帰途の神功皇后が牛窓に寄港した折、 官女たちが長旅の慰めに獅子や狛犬をつくって、五香宮にお供えしたというものです。
えびの背は櫛でラインを入れる。眼は小さい黒豆。
みかんの葉は「バベ」の葉で。緑のはピーマン。みかんは江戸しんこ細工でも定番です。
牛窓はまた、朝鮮通信使が何度も寄港したことでも知られます。 その名残のひとつ「唐子踊り」が現在も神社に奉納されています。 町に一軒という和菓子屋さんがつくるカステラ饅頭「唐子踊」にも唐子の姿が。 オリーブの入った羊羹もオリーブ園がある牛窓ならでは。
青く美しい瀬戸内海は穏やかでした。
2005.10
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